今の年代の人に、
狩りをした事のある人は少ないでしょう。

昔、私は祖父に連れられて、狸を捕る為に数度、
山にトラバサミを仕掛けに行った事があります。

山にも色々な約束事があります。






うろ覚えですが、
女山でしたので立ちションベンは、
女神様に見える様に頂を向いてする事とか、
(性器を見えないように隠すと女神様が怒って、山で遭難します)
お弁当は半分食べたら残りは家まで持って帰る事とか、
狸の後足は1本は女神様に御供えする事とか、
他にも細かな注意が沢山あったはずでした。

ある夏休みの日、
祖父の家に遊びに来ていた私は、
川に泳ぎに行こうとして、
気が付くと何故か山の中に居ました。

昼御飯前に出たはずなのにあたりは真っ暗で、
訳が判らず泣いてしまいました。

どのくらい泣いていたでしょう?

辺りがスゥ~っと明るくなって、
顔を上げると、
目の前に青い光が浮いていました。





その光は優しく、暖かくて、
何故か彼女が助けてくれるのだと解りました。

そして、
漂い始めた光に付いて行き、
山の麓に下りました。

山の麓には幾つもの懐中電灯の光が集まっていました。

その中に祖父の姿を見つけ、
「おじいちゃん」
と声を掛けると、
祖父は飛んで来て私を抱きしめました。





そして、すごい剣幕で怒り始めたのです。

私が帰ってきたのは、
家を出た翌日の夜でした。

その時です。
私は変な事に気が付きました。

私はたった今山の麓に降り立ちました。

ですが周りを見回すと、
そこは山から1キロ程離れた祖父の家の前だったのです。

青い光は何時の間にか消えていました。

その事祖父に話すと、
祖父は宴会をすると言って、
近所の男の人達だけでご馳走を持って、
山の祠の前で宴会をしました。





僕や従兄弟達、
近所の男の子達も付いていきましたが、
皆お酒を飲み、歌って楽器を奏で、踊って、大騒ぎでした。

後で聞いたのですが、

「女神様が最近人が山に入らないので、
寂しくなってお前を呼んだのだろう」
と祖父達は言いました。

その後、
他にも一晩だけ山で消えた男子が出た事から、
毎年夏祭りの後には、
山の祠で宴会をする様になったそうです。